読売新聞に連載の「みなみらんぼうの一歩二歩山歩」の130日版に「富士見山」が紹介されていた。

初めて聞く山名なので地図で調べたら富士山の西、甲府盆地の南にその山を見つけたが、そのエリアは「昭文社」の登山地図のいずれにもカバーされておらず登山情報の手持ちはなかった。

国土地理院地図でも調べたが紹介されていた「平須」からの登山路は記載されていない。

新聞に記された略図や山行記から展望台近くの分岐へは尾根筋を辿って上るらしいと読み取れ、左程危険箇所も無さそうなので訪ねてみることにした。

 

 

◇所要時間: 5時間25
◇難度(マロンとして): 易+++▼+難
◇マロンの日記: 
展望台手前の三叉路まではクサリ場以外、変化の少ない上りの一途で、ブナ林でしかフリーにしてもらえなかったので少し欲求不満の残る山歩きでした。

 

330分、家を出る。夜空には十五夜の月。

相模湖ICで中央高速に入り甲府南ICを下りる。国道140号線、52号線で笛吹川沿いに南下。中富町で52号線から外れて寺沢川沿いに富士見山登山口の平須を目指す。

村内通過の入り組んだ1車線舗装路はカーナビの助けなしには目的地に到達するのは困難そうな道だった。

大ざっぱに言えば最初は「久成↑」標識に従い、その後は「中富青少年自然の里→」標識に従って「自然の里」施設を通過し、先の三叉路脇で7台程度の駐車可能空き地を見つけたという感じ。

朝日の差し込み始めた空き地に先着車はなく、高速道ではマイナス4度だった気温はここでは0度。三叉路の30mほど左に「富士見山登山道・平須コース入口→」標識を見つけ、出発準備。

 

614分、コンクリート階段を上り杉林に入る。周りの杉には雄花は見られず安心して登山開始。コースは山斜面沿いに中程度の勾配で上っていく。背後から太陽が差し込む。数日前、関東地方に雪が降ったので今日は残雪を踏んでの山歩きと予想してきたが、雪は見あたらない。獣の臭いがするのか、ひも付きマロンがやたらと道脇を気にする。

643分、「頂上まで3.5km 2時間」標識を通過。森の中、2つ目の古小屋横を通過するあたりから登山道は尾根筋を辿り始めた。その先に「山頂まで2.5km」の標識。「山頂」と云うのは最高点ではなく展望台地点では…などと話しながら落ち葉の積もる小石混じりの道を登っていく。マロンも落ち着いて歩くようになってきた。

 

79分、体温が上がったので小休止。この後も尾根筋をほぼ一定角度で上る山道が続く。10分ほどで人工林を抜け出し、明るいブナの自然林に出た。空に雲は見当たらない。朝の太陽の下にシルエットで大きな山が出現。と、見えたのは雨ヶ岳や毛無山越しに山頂を見せ始めた富士山だった。

722分、「山頂まで2km あと1時間10分」標識を通過。今時、所要時間が記入されている看板は珍しい。ルートは隣の尾根筋に移るらしく、自然林の中を等高線沿いに進むようになった。

724分、「クサリ場 注意」看板の先でクサリを頼って沢筋を横切る。フリーにしたマロンは狭い足場をギリギリで自力通過。隣のブナ林の南斜面を上る様になったが下草の少ないブナ林は明るくて気持ちがいい。

 

744分、「山頂まで1.5km」標識を通過。

83分、「山頂まで1km」標識を通過。ブナ林を九十九折で登る。見通しが良いのでマロンをフリーにし、80mほど先行したところをトランシーバーで呼びかけると…近頃の散歩で「戻る=ご褒美のビスケット」の図式が刷り込まれたマロンは即座に反応し、九十九折坂道を駆け下りてきた。ザックを下ろして小休止。マロンは水を良く飲む。

816分、「山頂まで0.75km」「あと30分」標識を通過。標識の「山頂」文字が斜線で消され、「展望台」と手書き修正されていた。

山道沿いにロープが張られている。ロープ越しに山頂方向を見ると東斜面が大きく崩れて岩が露出し、見ている間にもザラザラと落石が続いていた。私達はこれを左に見ながら迂回して登っていく。

 

827分、「展望台まであと0.5km  20分」標識を通過。山頂に近づくに従い、ブナ林の中に潅木や太いツゲの木が混じり始めた。日陰には僅かに残雪。

836分、三叉路に上りついた。尾根越し前方に朝日を浴びた白銀の山々が南北に連なって見える。私達は左に進む。樹種は唐松、岳樺、檜、ミズナラ等に代わった。

3分ほどで又、三叉路。南に「←富士見山山頂」、北に「堂平峰 御殿山→」の標識。南に進む。

上り坂では重く感じた身体も平坦地になると楽なこと。唐松林を通過。上り勾配の山道が凍った雪で覆われ始めた。スリップに注意し登る。

 

 

847分、赤い小さな鳥居と石の祠のある「1640m 富士見山展望台」に到着。無風、快晴。早くも遠景は春霞が包み始めている。

太陽の真下に富士山。眼下には南に流れる富士川。これに沿うように街並みが点在して見える。
西に山頂を連ねた白銀の山々は南アルプスだった。北から北岳、間ノ岳、農鳥山…塩見山…赤岳と同定できた。鳳凰三山は山頂部分のみ僅かに残雪。

ムスビを食べながら景色を楽しんでいたら、消えかかった展望山座図が足元に置かれていて、横に「山頂まで30分」の看板。時間に余裕があるので正規の「富士見山」山頂まで足を伸ばすことにする。

 

93分、展望台を後にする。山頂へは尾根道で楽に歩けると思ったが、出だしは意外にも痩せ尾根で露岩の間のクネクネ道。足場を確認しながら慎重に下る。雪が凍っていて気が許せない。

99分、尾根幅は少し広がってきたが、今度はブッシュが山道に張り出していて煩わしい。正規の山頂まで足を伸ばす人は意外に少ないのかも。

 

916分、次のピークに近づいたら凍った雪で前進困難。6本爪アイゼンを履いてピークに登ると更に前方に高まりが見える。僅か下って上る。

933分、唐松林の中、平坦な山道が僅かに広がった地点に「富士見山1640m 山梨百名山」の柱標識と二等三角点があった。登頂記念ムスビを食べながら周りを見回してみたが、唐松の木立越しに展望台と同じ景色が見えただけ。

正規の山頂を見届けたことに満足し、5分ほどの休憩で帰路に付く。

 

103分、アイゼンを付けたまま展望台に戻る。太陽は上から照らすようになり富士山の山肌がハッキリ見える。

富士山の手前の山は竜ヶ岳、雨ヶ岳、毛無山、長者ヶ岳、天子ヶ岳で何れも登頂済み。

1013分、展望台を後にして下山開始。

1021分、三叉路通過。「1.5km」地点で一休み。風が気持ちいい。

1058分、クサリ場通過。マロンが渡るのを撮影していたら崖上から小石が落ちてきた。危ない危ない。

111分、自然林から人工林に入るところで同年輩の4人連れの登山者と交差。「山頂まで2.5km」のところで小休止。

1139分、自動車に戻る。結構暑くなっていた。

登山口への往路は村内の狭い道だったので別の道で帰ろうとカーナビで調べたら何れもクネクネ道。兎に角、往路とは別の道をと三叉路の「←矢細工」方向に進んでみる。トンネルを2つ通過し村はずれを回り込んでいけそうだったが、結局は村内を通過して国道52号線に出た。

2時半、無事、帰宅。