奥多摩の山のガイド書に「天祖山」の山名を見つけた。

ガイド書によると
 
奥多摩きっての静寂境で見事な原生林のなかにある好ましい山域なのだが、足の便が悪いのと急登急降下を強いられるので訪れる人が意外に少ない。
また山名の由来については
江戸時代には白石山、立石山、鍋冠山などと呼ばれていたが、明治初年、天学教の霊山となって山上に天祖神社が祭られたことから天祖山の名で呼ばれるようになった。
と紹介されていた。

インターネットで天学教を調べたが、詳細は分からなかった。この山を等高線図で見るといかにも「立石」とか「冠」の文字が使いたくなる形で「白石」の名も現在、東斜面下で石灰岩が掘られているとのことから納得。

今回も若葉を楽しみにしての訪問であるが妻は留守番役。

◇所要時間: 5時間3
◇難度(犬として): 易+++▼+難
マロンの日記: 
上り始めは急な山腹の九十九折の痩せた山道。ここを慎重に上りきると尾根幅が広がって気持ちのよい若緑の森の中を上るようになりました。途中、50mほど岩の尾根も通過。
頂上に近づくに従い、林の中はブナやナラの若葉で明るく、広々した林床は一面に落ち葉が積もっていてどこでも自由に歩けて楽しかった。

 

 

2時過ぎ、庭のマロンが雨戸を引っかいたので目覚める。昨晩、ザックにドックフードや水を詰め込んだのを見ていたので、今日は山に連れ出してもらえると考えたのかも。参った。参った。

230分、家を出る。薄曇で星はなし。

青梅街道から日原街道に進む頃には山の輪郭が見える程度に夜が明ける。日原鍾乳洞バス停先を左折し、林道日原線で八丁橋を目指す。途中のコンクリート橋の先は砂利道だった。

420分、日原川に掛かる孫惣橋袂に「←雲取山・天祖山」標識を見つけ、日原林道の幅広路肩に駐車。歩くには十分な明るさになっていた。(なお、孫惣林道へは一般車進入禁止のゲートが設置されていた。)

434分、八丁橋から日原林道を50mほど進むと「天祖山→」標識が右斜面上を指示。石積みの山道で登山開始。

先行登山者の気配はないのでマロンは最初からフリーにする。スプーンで抉られたような急峻な窪地地形に九十九折に山道が切られている。山道は30cmほどに痩せている所もあるので注意して登って行く。

15分ほど登り、マロンに水を与えると容器の半分ほど水をこぼされた。今日は2リットル持ってきたが、マロンは私と同量程度飲むので貴重な水になりそう。

 

450分、今日は単純に尾根を辿って上るものと思っていたが、これまでは急勾配の山斜面を折り返しながら上っている。周りは若葉に覆われているが、マロンを追いながら息を切らして上っているので鑑賞する余裕は無い。

先行マロンを呼び返したら昨晩、手直ししたマロンのザック(100円ショップで購入した2つのポシェットを体側に振り分けで背負わせたもの)の腹バンドが外れているのに気づき、急斜面の途中で縫い直し。

58分、山頂から南に伸びている岩尾根に上り上げ、あたりが急に明るくなった。

 

東側斜面は朝日を浴びた若葉に覆われていて美しい。上るにつれて、尾根幅が広がってきた。自然林の中に二抱えほどのブナの大木が混じりはじめた。すっきりと見通しの良い林のため、50mほど先行するマロンがよく見える。

522分、勾配はきついが予想外に変化のある地形の広尾根を気持ちよく登っていくとブナの大木先の路肩で塩ビパイプからチョロチョロと水が流れ出ていた。ガイド書に「一杯水」と紹介されている水場らしい。

 

535分、一段上り上げて電波反射板の設備脇を通過。

先に進むと自然林の中に檜の並木が現れた。参道の雰囲気と思いながら上っていくと正面にお宮風の廃屋。壁に大日大神の手書き文字があり、これで現在、1360m位の標高箇所に来ているのが確認できた。

555分、自然林だけの山と思っていたが、手入れの良い檜林を通過。

63分、背後に先代マロンと登った鷹ノ巣山、右手にはいつか訪ねてみたい酉谷山の山頂がまだ上に見える。どちらもこの天祖山とほぼ同じ標高なので、天祖山の山頂はまだ300mほど上らしい。

617分、相変わらず尾根を上っているが、前方の左右の斜面が急角度で立ち上がってきた。円錐形の山なら山頂近しという感じだが、この天祖山はこの形でまだまだ頂上は先になりそう。

鳥の声が賑やかになってきた。大きな突起に上りあげたら前方が10mほどの下り。其の先にまた大きな高まりが現れた。

 

625分、ブナ、コナラ、ミズナラ林の中に4抱えほどの枯れ巨木が立っている。横に「←天祖山 日原→」の標識。

638分、小社前を通過。ゴロゴロと石灰岩が続くようになり慎重に前進。山頂が近いのかと期待したが、その先はまた自然林の森に続く。だんだん足に疲労感。

651分、若いブナ林の中の石灰岩の岩稜の上を50mほど進む。傍らのツツジに蕾。

7時、山頂は近いと思われるのだが、頑張りきれず小休止。マロンが林床の枯れ笹の中を気にして入ろうとするが、ダニが居そうな感じで、呼び返す。4分ほど休んで出発。

 

山頂かと思って上ると又先があるといった繰り返しを続けるうちに傾斜は随分緩んできた。前方に小屋が見えてきた。

ガイド書には会所という建物があり、管理人が寝泊りしていると書かれていたので、マロンにリードを付けて近寄ってみたが人の気配無し。

頂上目指して参道らしい檜木立の間を上る。

724分、「天祖山」山頂に到着。森の中央に頑丈そうなお社があり、木組柵で囲まれている。その横に「天祖山」標識。

 

山頂からは木々に隠されて視界は殆ど得られないが、お社の裏に回って雲取山を木の間越しに眺める。山頂に雲が掛かっていた。背後の雲間から朝日が差し込んできた。ムスビを食べながら周りの新緑を楽しむ。

マロンはドックフードを食べ終わると木の下で何か齧りはじめた。そっと覗くと、齧っていたのは朽ち掛けた木の皮。マロンの好みは理解できない。

 

744分、下山開始。

 

753分、慎重に急傾斜を下っていると突然、マロンが猛スピードで坂を下っては上り返してくる。遊びらしいが、1年4ヶ月を迎えたマロンの強靭な体力、瞬発力に驚かされる。

新鮮なブナの若葉があまりに綺麗なので摘み取って噛んでみた。苦味はなく、これで餅菓子でも包んだら喜ばれそう。

 

846分、大日大神のお社まで戻る。足に疲れを感じ始めたので木階段に腰を下ろして小休止しているとマロンがまた何か齧っている。誰かが捨てた梅干の種だ。そのうち、カリッと割って全部食べてしまった。勝手にしろ!!

5分ほどで汗が引いたので下山再開。

854分、電波反射板横を通過。前方の鷹ノ巣山の頂上は雲に隠れ始めた。

マロンが沢筋の少し濡れた岩を睨んでいる。何かと覗いたらその辺りからクークーと蛙らしい鳴き声。すぐに水場を通過。

 

新緑の森に1本だけ朱色のツツジが満開。写真に収める。

 

925分、木立の中、遥か下方に車道が見えた。

下から大ザックを背負い2本杖の中年登山者が上ってきて交差。雲取山か酉谷山あたりへ縦走する感じ。登山口に近づいたところでは若い登山者と交差。

934分、登山口に下り切った。

937分、車に戻る。

1210分、一般道で無事帰宅。